こんなに読んでていいんですか

『ルーン・ブレイダー!』神野淳一

魔法と科学が共存する世界。大戦争のため文明は崩壊し人口激減で地上は住み心地最悪。箱庭とか言われる三つの空中都市がその科学力で世界を我が物にしている感じ。そこの一つで作られたホムンクルスと一人のガキが出会うことで物語は始まるんだけど。シナリオとしては普通。才能あるけど実力の無いガキが努力したり敗北したりして強くなっていったりライバルっぽい人が仲間になったり苦境にある人達が挫けずに立ち上がったりと何かこういう世界においては当たり前でしかない展開が続く。設定も色々とあっていいのだが本人の筆力がそれについて言ってない気がする。正直言うと読んでて辟易する部分もあった。面白かったことは面白かったんだが、もう読むことはないでしょう。


シュプルのおはなし雨宮諒

本が大好きなシュプルがお爺さんの宝物に纏わる話をお爺さんに話して聞かせる物語。なんとなくキノの旅を彷彿とさせる作品なんですが、同様になんとなく美しい話になっています。キノに比べると綺麗さでは敵いませんが読後の爽快感では此方の勝ちです。筆力としてはボチボチといったところなんですけれど、中々好みの作品でした。シュプルのおはなしのなかにいつも相棒として登場するムルカもこの物語の面白さの一つです。完璧に良い男、とでもいいましょうか。小説ではよくいるタイプだからこそですね。


『埋葬惑星』山科千晶

死んだ子供に祈りを捧げながら暮らすアンドロイドだけがいる惑星のお話。星に不法侵入してまで墓参りしようとする傭兵に近づく猫ロボットの望みは自分のマスターを墓から出してあげること。マスターの遺品の中に書かれた二行の文章がAIに大きな変貌を与えることになり・・・

きっかけは電撃大賞とはいえ受賞とは何ら関係なくデビューしてきた新人の作品。これで完結としてもいいつがいにバッチリ内容詰まってますが、続編を書くのに必要なぐらいの謎は確りと残しています。文章的にも結構好みで今後の展開も何となく気になったりしてます。キャラクターが大して立ってないのが残念ではあるんですが、まあそういうのは追々どうにかなることですし。


塩の街有川浩

世界中の人が塩になっていく塩害のため滅び行く世界の2人の物語。流石は大賞受賞作って感じで、このところ読んだ電撃作品の中では圧倒的な面白さ。塩の街の人との出会いと別れ。それをきっかけに自分の過去のこととまっすぐに向き合おうとする少女。お互いの大切さを深く自覚していく2人。そして2人と世界の運命を変えるきっかけとなる男が現れる。そんな中世界よりも何よりも、大切に思う人の為に2人が下した決断。何とも素敵なラブストーリーです。


世界は密室でできている。舞城王太郎

なんていうかいつもどおり舞城節全開って感じの本作品。読み始めは久々の舞城ってこともあって途中で読むのやめちまおうかと思うぐらいについていけなかったのだが半分過ぎてラストに向けて突っ走る所では作品に没頭しちまって、ラストの方はなんか滅茶苦茶面白いじゃねーかこれって気になってしまいました。二度と読むことは無い作品ですけど発想力という点でこの人は半端ない天才と思います。