電撃二冊

『Missing 12 神降ろしの物語』甲田学人
Missing (12)


人は知識により恐怖を緩和することも出来るが恐怖を助長してしまうこともある。よくある例えだが、これまで平気で遊んでいた広場が実は地雷原だったということを知ったせいでその場所から一歩も歩けなくなってしまった、というのはきわめてわかりやすい例である。それは危険回避をするためには当然の反応なんだが、実のところその地雷は見事なまでの不良品で、燃やそうが殴ろうが踏もうが絶対に爆発することは無いのだが、そこまでの知識はないため彼は恐怖に咽び泣きながらその場にたたずむ羽目になるわけだ。

生半可な知識や経験に基づく行動というのは結果的に自分に害をなすことが多い。充分な知識や経験を得るまで何もするな、ということではなく、生半可な知識や経験に頼り切るのをやめればいいだけの話だが、その見極めが難しいわけで。

本シリーズにおいてのキーワードは異界と怪談であり、怪談により現世と異界は交わりをもつ。
怪談が普及する要因の一つとして、それ自体が至極あやふやなものであり、とりようによってはどういうふうにでも取れるというものがあげられる。広く語られている怪談では起こる現象とその結果のみが前面に押し出されており、その現象と結果の理由というものがひどくあやふやである。だからこそ同じ物語がさまざまな形で流布されていくことになる。もっとも、何故そうなるのか、ということが明確になっているものは怪談とよべない気がするのだが。

とまあ全然本作の感想についてはふれていないわけですが怪談が好きな人にはお勧めの本シリーズの最終章の始まりであるところの12巻なので、1巻から読んでる人はさっさと買って、1冊も読んだこと無い人はとりあえず1冊読めばいいんじゃないかと思います。

(☆☆☆★)


リリアとトレイズ Ⅰ そして二人は旅行に行った(上)』時雨沢恵一
リリアとトレイズ (1)

幼馴染というのは幼いころから馴染みのある人間をさすわけだが、ある世界においての幼馴染というのは、朝になると勝手に部屋に入ってきてやさしくおこしてくれたり、ちゃん付けで呼ぶのをやめてくると何度いっても毎朝毎朝チャイムを鳴らしつつひろゆきちゃ〜ん(仮名)と呼び続けたり、逆に朝迎えに行くと何故かこの間まで通っていた学校の制服を来て玄関に出てきたりするような可愛らしい娘っ子のことだけを示すらしい。ちなみに俺の幼馴染は生まれた1年後ぐらいから12年間ぐらいの間近所で過ごして、いつも俺より少し成績と運動神経がよくていつも俺よりも少しだけ身長が高かった。向こうが引っ越して以来その関係は途切れ気味だったのだが、何故か偶然向こうも看護師になろうと決意し、これまた偶然だが一年留年したらしく俺と同学年だったりする。もっとも行ってる学校の偏差値は段違いなのだが、これもまあいつものこと。

アリソンの正当なる続編であるところのリリアとトレイズにおいても、前作同様幼馴染というのが重要なキーワードになっている。前作ではお互いがお互いを大事に思ってはいるものの、猛烈にモーションをかけ続けていたのはヒロインであるアリソンであった。今回はうってかわって、お互いが大事に思ってるのか思ってないのかよくわからない関係の中、猛烈にモーションをかけ続けているのはヒーローであるトレイズである。前作ではなかなか通じないアリソンの思いに対するもどかしさがこそばゆかったのだが、今回では全然相手にしてくれないリリアの素っ気無さがなんともいえない気持ちにさせてくれるのである。それに加えて年を経ても尚可愛いアリソンがいることや、おそらくシリーズでもトップクラスのしっかりものであるメリエール(実際は脇役)が今後どういうふうにかかわって来るのだろうかなどと想像することが非常に楽しいのである。

(☆☆☆☆)