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『竜が飛ばない日曜日』咲田哲宏

親友が死んだ二日後の夜に突然竜が世界に出現したことを自覚した少年。
そして、彼と同じ日に竜の存在を自覚し、同時に同じ一日を二度繰り返すことになる少女。
竜が支配する世界に対して違和感を覚えている二人の物語。

竜に食われることが人間にとっての何よりの喜びである、というのが常識である世界で生きるのは今の俺たちには絶対に出来ない。
自分がいかに幸福であろうと不幸であろうと、竜に食われるということに勝る状況は存在せず、世界中にただ一人の例外も無くそれを望んでいる、なんてことは絶対にありえないからだ。それは竜が現実には存在しないから、という至極真っ当な理由を抜きにしても、全ての人間の思考のベクトルが一つの方向だけに向けられて、それが固定されるなんていうことがありえないからである。

そんなありえない世界で一週間を生き抜く彼らの必死で純粋な思いは人生を怠惰に生きてる俺にはなんとも眩しく映る訳でした。
手放しで絶賛できる、というほどに面白いわけではない作品ではあるものの、中々興味深い一冊であるのは確かです。

(☆☆☆★)