2冊

『夏月の海に囁く呪文』雨宮諒

夢久島という遠い小さな島で住む少年と、とある噂話につられて島を訪れた一人の女性が出会ったことで始まる4つの物語。
登場人物は誰も彼も自分の現状に不満を持っていて、それでもそこから抜け出すことが上手くできない人たち。
彼らは『海で呪文を唱えると、本当の自分の居場所に連れて行ってくれる』という噂話と出会ったことで変わるきっかけを得ていく。

シュプルのお話ではなんとも童話チックなメルヘンなストーリーを綺麗に紡いでいた作者。
あの作品を読んだだけでも作者の巧さはわかっていたつもりだったが、この作品でそれがわかりやすい形で現れた感じ。
人生がつまらないなー、とか、こんなことでいいのかよ俺、とかちょっとでも思ってるような人はさくっと読んで感動したり同調したりしとけばいいですよ。

292冊目(☆☆☆☆☆☆☆☆☆★)


『憐 REN 遠いキモチと風色のソラ』水口敬文

機械の神に世界の全てをゆだねている未来から過去に流されてきた罪人の少女の物語もついに完結。
段々と現代に順応していき、学校や友人といった今の自分の周りの環境に安らぎを覚え、いつからか彼女は『自分の場所』を得ていた。
しかし、未来から一人の少女と『彼』が現代にやってきたことで、彼女の生活から安らぎが失われていく。

みたいなかんじなのが前回までの展開。
というか、実際のところ本編2冊発売した後で短編がでて、直後のこの巻で完結となってるので前回までの展開全然覚えてなかったんですけどね。でもまあとにかく、さっき読んだ『夏月の海に囁く呪文』が『本当の自分の場所』を探す物語で、今読んだこれは『自分の場所を守る』ための物語みたいな感じです。厳密には『ようやく得た自分の場所を守る』物語なんですけど。

ま、シリーズとしてみたら、色々とグルグルと思惑が周りすぎるのがどうかと思うところはあったものの、主人公の主義が一貫していたのがよかったり、だんだんと前向きになっていくヒロインが可愛かったり、人に依存しすぎる人間が変わっていく部分の描写が素敵だったりと読みどころ充分で中々面白かったです。ちと駆け足だった感じはするものの、立派に完結してたのもグッド。

293冊目(☆☆☆☆☆☆☆☆)