明日は素朴で

きみとぼくの壊れた世界西尾維新
ミステリ作品というのは突き詰めた話犯人が誰でどういう手段を持ってそれをなしえたか、という部分の追求を楽しむ作品であるからして読んで最も面白いのは初見の時だったりします。二度目以降の楽しみ方としては初見で気付けなかった伏線をのんびり眺めて感心したり初見ではよくわからなかった台詞回しの本音部分を堪能したりすることにあるわけですが。で、これは基本的に本格めいたキャラクター物でありミステリーでもあるわけなので後者の部分の面白さは二度目の今回割愛で前者の部分の面白さだけを堪能。数ある維新作品の中でもこの物語は活動的な意味での動きが非常に少ない部分であり、殆どの文章は登場人物同士の会話及び主人公の思考のみで構成されています。それはまあ戯言シリーズにも通じる部分ではあるものの割合的にはこっちのほうが4割り増しといったところ。ロジックの部分が物凄く、その大半が何故かミステリ小説についての考察だったりする部分が『ああ、だから本格物なのかな』と思わせたりしてるような気もするのですが。
それはそれとしてこの物語は常に最高の選択肢を選んできたのに何故か周りの世界が壊滅状態になってしまった優しい男のお話です。登場するのは当然変人だらけですが、正直一番かわいそうなのは一番嫌われそうに描かれた彼でしょうね、実際問題別に悪いことはしてないはずなんですが。
読者の大半は恐らく彼を嫌いつつも同情し、彼女に辟易しながらも愛してしまっていることでしょうが、俺ももちろんその一人。
ということなので同じ姓を持つ彼が主人公であろう囲われた世界を堪能するために4年弱ぶりに再読することとなった壊れた世界ではありますが、今と昔の維新の違いを確認できたという意味でも有意義な時間だったと断言しましょう。
280冊目(☆☆☆☆☆☆☆☆☆)